三重苦ゴルファーの日記

69歳になった飛ばない・寄らない・入らないの三重苦を持つシニアゴルファーの日記です。

守るか攻めるか

 今日は冷たい雨が降る月曜日ですが、こんな日はカーペンターズの「雨の日と月曜日は(Rainy Days and Mondays)」が自然と頭の中に流れてきますが、このことは以前も日記に書いたので、今日は触れません。


 阿蘇地方も午前中はかなりの雨量がある予報だったので、阿蘇ハイランドの1人予約は成立前にキャンセルしています。


 さて、昨日は久しぶりに地上波のテレビでゴルフを見ようと、LPGAツアーの第40回大王製紙エリエールレディスオープン最終日をテレビ観戦していました。


 優勝は原英莉花プロで、2020年の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」以来の通算4勝目を飾りましたが、勝利を手繰り寄せたのは17番パー5における2オン1パットのイーグル奪取でした。


 16番を終わって、原プロは同組の柏原明日架プロと通算15アンダーで並んでいましたが、17番パー5のセカンドショットが明暗を分けてしまいます。


 柏原プロはフェアウェーの絶好な場所でしたが、アイアンで刻みを選択し、原プロは右ラフから約210yをFWで果敢に2オンを狙って見事にオンしていました。

(エリエールGCの17番パー5のレイアウト。池がありアマチュアにとっては嫌なレイアウトのホールです)


 17番パー5は、グリーン手前の両サイドに池があり、ピンは左サイドだったので2オン狙いは勇気を試されるものですが、同組の三ヶ島かなプロも2オンに成功していて、解説していた岡本綾子プロが柏原プロのアイアンを持っている姿を見て「私だったら狙います」とボソッと呟いていたのが印象的でした。


 岡本プロから見ても、柏原プロはほぼ平坦なフェアウェーという状況だったので、優勝を目指すなら2オン狙いは当然という考えだったのでしょう。
 結果的に柏原プロは、3オンしましたがバーディーパットを外してパーに終わり、原プロはイーグルパットをねじ込み、一気に2打差が付いてしまいます。


 三ヶ島プロもイーグルは逃しましたがバーディーとしていて、結果論でしょうが、柏原プロが本気で優勝を目指していたのであれば、2オンにチャレンジすべきだったというものです。


 ここで両者の置かれた位置が問題で、原プロは大会前まで1億円以上の賞金を重ねて賞金ランキング上位を確定していたのに対し、柏原プロは3千万円程度の獲得賞金でシード権外という位置で、この事実上の最終戦で賞金を積み上げて50位内を目指すという微妙な位置だったのです。

(左がこの試合での獲得賞金額で、右が大会後の賞金ランキング。柏原プロはこの大会で上位入賞がシード獲得のための絶対条件でした)


 結果的に柏原プロはこの大会で2位タイの賞金726万円余りを加算し、賞金ランキング46位に滑り込みましたが、もし賞金シードに問題ない位置だったら間違いなく2オン狙いにしたはずです。
 柏原プロは1996年生まれの25歳ですが、これまで5シーズンキープしていた賞金シードを今年は失うピンチだったのです。


 今週の木曜日から宮崎カントリーで始まるLPGAツアー最終戦の「チャンピオンシップリコーカップ」の出場権は、今季のツアー優勝者や賞金ランキング上位者など40名に限られるため、柏原プロは優勝すればシードはもちろん、地元で行われる最終戦への出場資格も得るところでした。


 17番パー5を刻めば、まずボギーは叩きませんが、もし2オン狙いのセカンドで左右の池に捕まるとスコアを落とすことに繋がりかねず、自分の置かれた立場を考えると刻みの選択も仕方なかった面もあります。
 現に結果はパーとしてスコアは落とさず、最終18番でボギーにして2位タイになってしまいましたが、17番までは単独2位だったものです。


 つまり、あのセカンドの地点では、第一目標の「シード権獲得」があり、そのためには「スコアを落とさない」という大命題の元に導き出された選択が「刻み」だったものです。
 パー5はプロなので刻んでもバーディーチャンスは作れるもので、バーディーが取れなかったのは結果論だということです。


 ただ解説の岡本プロにしてみれば、優勝のチャンスは早々来ないため、プロである以上はここはチャレンジすべきだと思ったはずで、神様がせっかく用意してくれた状況を生かさないのであれば、今後のゴルファーとしての未来は明るくないと思ったのではと私は感じています。


 目先の利益と将来への可能性を天秤にかけた状況で、どちらを選ぶかは人それぞれですが、わくわくするようなプレーを人に見せることがプロの役目であり、損得抜きでチャレンジする姿は忘れてほしくないものです。


 これは以前に聞いた話ですが、全盛期の尾崎将司プロは、無理な場面でも果敢にチャレンジする姿をギャラリーに見せるように心がけていたそうです。
 アイアンを持って刻むという選択肢はなく、FWを持ってミスしたように見せかけて刻んでいたというのが真実で、尾崎プロは「俺に刻みを期待するギャラリーなどいない」と言っていたと聞きました。

    

 1996年の米国映画「ティン・カップ」は、ケビンコスナーが落ちぶれたプロゴルファー「ロイ」を演じた作品です。
 1人の女性を巡って、女性の恋人である大学のゴルフ部同期の有名プロゴルファーと対峙し、破天荒なゴルフを展開しますが、結果的に女性はロイを選び2人は結ばれます。


 USオープンの優勝争いの中で、最終日の池越えの最終ホールでロイは2オンを狙って池に落としますが、前方の池の手前からのプレーを選択せず、同じ場所から何度もチャレンジして池ポチャを繰り返します。
 持っていた球が尽き、最後の1球となったそのショットで見事カップインするという漫画のようなエンディングでした。


 さすがに、このロイの行為はどうかと思いますが、ここにもプロゴルファーである以上は「見せる=魅せる」ことがプロの義務だと言っているように私は感じています。


 国内男子プロの人気低迷が続いていますが、「勝てばいい」「勝つためには危険は冒さない堅実なゴルフ」という考えのゴルファーが多くなったためではないかと私は危惧しています。
 プロゴルフはある意味「見世物」であり、見た者を「ワクワク」「ドキドキ」させるようなプレー(いわゆる「銭が取れるプレー」)をしてなんぼというものです。


 堅実なゴルフは本来アマチュアがやるべきゴルフであり、そのアマチュアが無謀なチャレンジを繰り返すのにプロがチャレンジしないのは本末転倒だというもので、ゴルフの人気を上げていくためにもプロには魅力のあるプレーをしてほしいし、する義務があると思っています。


 私のゴルフが最近つまらないと自分自身で思っているのも、無謀なチャレンジをやりたくてもできず、無難なゴルフを選択するしかないためなのでしょうか?