左右の手は逆に動くもの
今日の熊本は朝のうちは晴れ間が見えていますが、気温は一桁台でいったんはやって来た春がどこかに寄り道しているようです。
それでも日中の長さが長くなり、自動で照明を点ける時間の設定が12月より1時間以上も遅くなっているので、確実に春はそこまでやって来ているものです。
さて、ゴルフは道具を使うスポーツですが、ラケット1本の卓球やテニスとは違うところが道具が多いという部分で、この道具の多さが上達を妨げているという皮肉な特徴があります。
クラブの使い方では勘違いしている人が多く、短いクラブではそこまで間違った部分が結果に出にくいものですが、長さのあるドライバーではその間違いが顕著に出てしまいます。
勘違いの多くが「飛距離を出したい」という願望から起こる「球を強く叩こう」「クラブをしっかり振ろう」という意識から起こることで、そのためには強くクラブを振り回せばよいと考えがちです。
その結果、様々な勘違いが発生してしまいます。
① プロのショット画像を見てタメを作りすぎる
最近はスロー動画でプロのショットを見る機会も多いのですが、以前は画像でその一瞬を切り取った場面しかなく、プロがタメを作ったスイングを参考にするケースも多かったものです。
ゴルフ雑誌にも、この「タメ」を特集することが多く、それを参考にするアマチュアに間違った迷路の入り口を提供をしてしまい、いったんハマった迷路から抜け出せないゴルファーを量産してしまいます。
(ネットの検索で「ゴルフのタメ」と入れると、今でも「タメが必要」という記事は多くありますが、私は「タメ=ダメ」だと思っています)
特にドライバーというクラブは長さがあるため、タメを作ろうとして形だけ真似をしても、結果的に振り遅れが発生し、その結果フェースが開いて当たるというスライスの要素を生み出します。
雑誌に「タメが飛ばしに重要」と書いてあるからそこを練習しているのに、結果はスライスばかりということはほとんどのゴルファーが経験したことです。
② ヘッドスピードを上げる
この「ヘッドスピードを上げる」も飛距離アップには欠かせない要素で雑誌の特集に組まれがちです。
だからといって無茶振りしても、ほとんどの場合は手だけを振ることになり、肝心のクラブヘッドのスピードは上がらないものです。
しかし、それに気づかないゴルファーは力みまくって振ろうとする無駄な努力をしてしまい、結果的に一番大事な「ミート率」の低下に繋がり、ますます「飛ばない」「曲がる」球しか打てなくなります。
このようにざっと挙げただけでもアマチュアゴルファーが勘違いする要素が巷に氾濫していますが、ゴルフは願う結果を得るためには「真逆」な考えをしなければならないという天邪鬼なゲームなのです。
つまり、①の「タメ」を作りたければ「タメ」を意識しないスイングが必要だし、②のヘッドスピードを上げるためには、逆に「ゆっくり振る」意識が必要になります。
ゴルフスイングの一部は円運動ですが、円運動の加速の方向は円運動の中心に向かっているものです。
つまり、一生懸命に早く振ろうと手を動かしても円の中心になるはずの手が動いてしまうため加速は出来ないことになります。
円周上にあるヘッドを加速させるためには、手を動かさないことが重要で、それはトッププロのスイングを見るとインパクト直前のいわゆる「タメ」の場面からインパクトまでの手の位置がほとんど変わっていないことからも分かります。
ここでイメージの話に変わりますが、人間はイメージしても実際はそうなっていないことが多く、それだけイメージ通りに身体を動かすためには極端なイメージが必要になって来ます。
「手を動かさない」と思ってもそれだけでは無理で、反対に「逆方向に手を動かす」意識でちょうど良いものです。
普段の両手のグリップはくっ付けていますが、「スプリットグリップ」という両手を離して持ってみてやってみます。
上の図のように右手は飛球線方向に振りますが、左手は逆方向に振るとヘッドが大きく動きますが手の位置は動かないことになり、これがインパクト前の両手の動かし方になります。
やって見れば分かりますが、このスプリットグリップで振ると、フォローがスムースに取れるはずで、フォローが上手く取れない人は両手を詰めたグリップでも左右の手を逆方向に動かしてみればフォローまでクラブが動いていくものです。
この図は梃の原理のうち「第一の梃」を表していますが、支点を中心に力点と作用点が逆に動くことを示しています。
両手で持つグリップの中間に支点があると考えれば、左手を逆方向に動かせれば梃の原理で大きな力をヘッドに伝えられることも分かります。
つまりイメージだけでなく、実際にこうした逆の動きを積極的に使うことが重要ですが、この部分はプロのスイングを見ても分からない部分であり、飛距離を出すコツの一つです。
一生懸命にクラブを振ろうとしても飛距離が出ないと悩むのであれば、こうした逆の動きを取り入れてみると、また新しい世界が広がっているかもしれません。