三重苦ゴルファーの日記

69歳になった飛ばない・寄らない・入らないの三重苦を持つシニアゴルファーの日記です。

ヒッコリーパター

 ゴルフクラブはルールでは14本まで携行が認められますが、ドライバーやウッド・UT・アイアン・ウエッジなど様々な種類のクラブはあれども、必ず14本の中に入れておくべきクラブがパターになります。


 パーというスコアの基準は、必ずグリーン上のパット数が2打として含まれていて、たとえば標準的な18H パー72でいうと、36打がパターを使うパット数で残り36打が他の13本のクラブでのショット数になっています。
 つまり、ゴルフのスコアはパット次第であるともいえ、スコアに占めるパットの比重は実際にも高くなります。


 プロのトーナメントで連続優勝が困難な理由の一つが、最終的にパットが入るか入らないかという極論すれば運任せという点にあり、どんなに素晴らしいパットを打っても必ず入るとは限らないのがパットで、それは「神の領域」になってしまうのではというものです。


 ゴルフクラブは様々なルールの範囲内で作られていますが、唯一パターだけには他のクラブにない許された規定があり、それだけパターを使いこなすのは難しいという証です。
 例えば、グリップは他のクラブは断面がほぼ円形のものという決まりがありますが、パターには円形でないものも認められているし、ヘッドの形状も他のクラブとは違って様々な形のものが認められています。


 私はラウンドでいろんな方々のパターを観察するようにしていて、たとえばスコッティーキャメロンパターを使っている人には、許可が得られれば触らせてもらうことがあります。
 先週のラウンドでは、これまで見たことがないパターがパター収納筒に入っていて、途中の待ち時間の際に、許可を頂き撮影させてもらいました。

(ヘッドは木製で、フェースには塗装が剥げた使用跡が残っています)


 所有者によると40年ほど前に手に入れたパターだそうで、他のクラブは処分してしまったけど、このパターだけは処分せずに実際に使用しているとのことでした。
 ヘッドが木製だということにも驚きですが、もっと驚いたことがシャフトも木製(ヒッコリー)だったことです。
 ヒッコリーとはクルミ科ペカン属の木の一般名で、スティールシャフトが使われ始める1926年以前のゴルフクラブのシャフトに一般的に使われていました。

(ST.ANDREWSの工房によるハンドメードと書いてあるようです)


 ソールにある文字などを元に調べてみると、現在でも復刻版のクラブが売られているようですが、オリジナルは100年ほど前に作られたもののようで、このパターがどちらになるのかは私には分かりません。
 古いクラブは基本的にはコレクション対象になりやすいものですが、それを良しとせずこうしたヒッコリークラブだけを使ってプレーする愛好家もいるようです。

(上の画像は15,000円でオークションに出品されていたものです)


 ネットに出品されていたものはそんなに高価ではないものの、地元セント・アンドリューズの工房では現在でも特注で作成してもらえるようで、日本にも専門のショップがありました。


 また「ヒッコリーゴルフ」というカテゴリーの競技もあるようで、そこではパターだけでなくクルミ材をシャフトの素材として使ったクラブだけでゴルフを楽しむとのことで、スチール製のシャフトが登場する1930年代以前のスタイルで、100年ほど前のゴルファーが楽しんでいた世界を追体験できる競技であり、世界大会も開催されているようです。


 服装は当然、ニッカボッカーズにハイソックスというオールドファッションに身を包んでプレーするのが習わしだということで、使う球も「糸巻き」という拘りですが、それには理由があり、現代のソリッドボールではクラブ側が壊れてしまうというものです。


 最先端のスイングで350y以上の飛距離をたたき出すトッププロも魅力ですが、こうしたオールドクラブで先人のゴルフを体験することも、またゴルフの魅力の1つなのでしょう。


 1本の古びたパターから、自分の知らないゴルフの世界があることを知るきっかけになりました。