初心者の練習方法
私がゴルフを始めた初心者の頃は、何も分からず打ちっ放し練習場でドライバーばかり打っていた記憶があります。
なぜならドライバーが上手く打てず、ドライバーさえ思ったように打てるようになった暁には、きっとゴルフの上級者になれると勘違いしていたからです。
そのため、練習場に通い、毎回毎回ドライバーショットの練習をしていましたが、どんなに練習しても自分が理想している真っすぐに飛ばすことはできなかったのです。
ある時期になり、このままでは伸びないと思ってレッスンを受けようと決心し、あるゴルフ練習場に行ってみて、そこで怖い顔の厳しい先生に巡り合いました。
その先生は、まず最初に私の希望しているゴルフのレベルを尋ねてきて、なんと答えたらよいかわからず咄嗟に「パープレーしたいです」と答えたら「だったらそのつもりで教えるから」と言われてしまいます。
先生から課せられた練習は、8番アイアンでのハーフショットを打つ練習でした。ほかのクラブを持つことは許されず、練習時間中はずっとそればかりでしたが、他のレッスン生はドライバーを打ったりすることも許されていて、「なぜ?」と不満に思っていました。
先生曰く、「スイングは小さなスイングで作り上げなければダメ!あなたが100切りを目標にしている程度ならドライバーをすぐに打たせるけど、あなたの目標はずっと高いからまずスイングの基本を身体で覚える必要がある」とのことでした。
球が飛んでいく方向は、クラブフェースの向きが大きく影響しますが、スイングの方向で曲がる要素のスピンがかかり、まずハーフショットがきちんと当たらなければ、大きなスイングをして当たるわけがないという理屈です。
なぜ8番アイアンなのかというと、先生は「7番でも6番でもいいけど、8番が一番バランスが良いクラブで、150yという距離を狙うクラブになるから」と言っていました。
その上「8番を練習していれば、その前後のクラブは練習しなくても打てるようになるし、スイングが分かってくればドライバーも打てるようになる」とも言ったのです。
この1本のクラブだけで練習する方法は、実はジュニア向けの指導方法だったのです。初心者の小学生は、1本のクラブだけでスイングを一から教え込まれ、結果的にスイングの何たるかを理屈ではなく身体で覚えていきます。
ハーフスイングは、コントロールショットに繋がり、ハーフスイングできちんと当たるようになれば、他のクラブも同様に上手く打てるようになります。
アイアン1本だけでスイング練習していた初心者の小学生が、1年も経てばスコア80台でラウンドできるようになるのは、この基本を押さえた練習をしているからで、何年たっても100切りできないおじさんゴルファーは無駄に長いクラブを振り回す練習をしているためです。
ネットのレッスン動画に出演しているプロも、子どもの頃に最初は9番アイアンしか持たせてもらえず、そのクラブでいろんな打ち方をやってみたと言っていました。
地道な練習は面白いものではありませんが、それはもっと長いクラブを打てなければ上手くならないという勘違いから来る「焦り」があるからです。
1本のアイアンで、ハーフショットを繰り返し、ある程度打てるようになったら1本のクラブでいろんなショット練習をしてみると、なぜ曲がるのかという理屈が身をもって分かるようになってきます。
そして、球が曲がることは「悪」ではなく、曲げてコントロールする意識も生まれてきます。
私が練習場で、ドライバーをまっすぐ飛ばそうと練習していた時期は、単に下手を固めるだけの練習だったことが良く分かります。
もし、これからゴルフを始めようと思っている方がいれば、1本のアイアンでまずハーフショットの練習から入ってみませんか?
ハーフショットをきちんと打つのは意外に難しく、安定して正確に打つには、「ビハンインド・ザ・ボール」の重要性、体重移動のやり方、グリッププレッシャーのかけ方、ダウンスイングでの力み防止などなど、フルショットでは気づけないスイングの肝が数多く発見できるようになり、ひいてはドライバーからパターまで共通する注意点が理解できるようになります。
その上、そのクラブが得意になり、そのクラブの飛距離がしっかり把握できてくると、その前後のクラブの飛距離も必然的に分かるようになるため、最初に1本のクラブだけで練習するメリットは想像以上に大きいのです。
100前後のゴルファーを目指すのであれば、ドライバーを最初から振り回すのも良しですが、70台のスコアを目指すのであれば、こうしたジュニア育成の方法から学ぶことが早道です。
実際に1本のクラブで練習することは、かなり精神的なタフさも必要で、他のクラブを打ってみたいという誘惑を振り切る意識は、将来のラウンドで願望の元にクラブ選択をしない意識の訓練に繋がります。
1本のクラブでハーフショットの練習を、極めるようになった暁には、きっと本格的なゴルファーの卵になっているはずで、100の壁や90の壁などは簡単に乗り越える力が付いているはずです。